2014.08.08
毎日新聞

ストーカーやDV事件で、加害者が市販のGPS(全地球測位システム)発信機を被害者の車などに装着するなどして居場所を特定し、事件に及ぶケースが後を絶たない。警察は被害者に対し、住民基本台帳の閲覧制限をするよう奨励してきたが、対策が骨抜きにされかねない恐れもある。摘発のハードルは高く、被害者の自衛策も限られているのが現状だが、警察は「不審な行動を感じたら、すぐ相談してほしい」と呼び掛けている。

◇住民票閲覧制限、意味なく

東京・秋葉原には、本来は高齢者や子どもの位置検索などに使われるGPS発信機を販売する店が並ぶ。
店頭で紹介していた店員は「電池は4日間持つし、地上にいる限り、居場所も時刻も相当分かる」とPRした。

実際に店員が装着して移動した際の記録をパソコンで見せてくれた。対象車が通った地点と日時が浮かび上がる。価格は数万円するが、レンタルもある。
「探偵に頼むよりずっと安い」。屈託なく笑った。

ストーカー相談を数多く受けているNPO「ヒューマニティ」(東京)の小早川明子理事長によると、住民票の閲覧制限など被害者が手を尽くして避難しても、加害者から避難先の写真が送りつけられるなど居場所を知られた事例が最近よくあるといい「GPS発信機が使われるケースは増えている」と話す。

今年2月、群馬県館林市で、女性(当時26歳)が元交際相手のストーカーの男(その後自殺)に拳銃で射殺された事件。閲覧制限をかけていた女性の居場所を割り出そうと、男が使ったのがGPS発信機だった。
群馬県警によると男は知人に指示し、まず女性の家族の車にレンタルのGPSを装着させた。それにより女性本人の車や住所を把握した上で、女性の車に対して、自分で購入した別のGPSを付けて追跡、事件に及んでいた。

11年5月、兵庫県で女子大学生が元交際相手の男に刺され、重傷を負った事件では、男は女子学生のバイクにGPS発信機を取り付けて凶行に及んだ。
判決などによると、2ヵ月の重傷を負った女子学生は、精神的ショックなどで就職活動も断念するなど大きなダメージを負わされた。

海外でも、韓国の俳優のリュ・シウォンさんが妻の車にGPS発信機を取り付け、後で気付いて抗議した妻の顔を数回たたいたなどとして、13年に「位置情報保護法」違反罪などに問われ有罪判決を受けている。